乃井野の列祖神社には上の写真のような額が上がっている。明治18年(1885)、新宿の後藤 譲氏奉納の七十一個翁と記された「三日月六題和歌」である。
1.五谿(ごがたに)残雪
五谿とはJR三日月駅の南にある山の谷で、北向きのため雪が融けにくく、残雪がいつまでも消えない。その景色のすばらしさを詠っている。
2.方山躑躅(ツツジ)
方山とは三方里山のことで、その山を彩るように咲きほこる躑躅がとても美しく、新しい春が来たことを感じることができる。
3.文川螢火
文川とは志文川のことで、初夏の夕べに、その川辺を飛び交う多くのホタルの放つ火を目にすることは、とても情緒があって味わい深い。
4.赤社朝霧
川筋に位置する赤社(あかやしろ)は、朝霧が深いことで名高く、夜明けとともに深い霧の中から三方里山をはじめ周囲の峰々がぼんやりと現れ来る情景は、筆舌に尽くしがたい。
5.千峰秋月
秋、この地を取り囲む多くの山々に名月が映える。満月(芋名月)はもちろん、十三夜の月(豆名月)も十六夜の月(立待月)もまた美しい。
6.朏森夜雨
朏(みかづき)の森とは三日月の西村の森周辺をさしている。雨降る夜は、何処からか、そこはかとなく漂うこころよい香りに酔いしれることができる。
この六題に二題を加えて「三日月八景」ということがある。古来よりその地の名所を「近江八景」とか「金沢八景」などということになぞらえたようである。その加えられた題は、
7.柳橋晴嵐
柳橋とは特定の地名ではなく、素直に川端の風景を表現していると思われる。晴れた日に山々にかかる霞もまた、冷え冷えとした空気をともなって、そのような川端風景に酔うよう
な感じがする。
8.露山夕照 : 高蔵寺の山号が済露山で、そこの夕景色を愛でている。夕日に照らさ
れた古刹の姿を眺めていると、往時を追懐するかのようである。
以上、これらの二題である。
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