西大畑から鍋倉へ向かう道(県道449線)の右下に大きな池がある。この池はたいへん優雅な名で「花まつり池」という。この地は西大畑であるが、池水は南光地域多賀方面の水田に使われる。「花まつり」と聞いて思い浮かぶのは、4月8日の灌仏会(かんぶつえ)のことであろう。
しかし、この池の名「花まつり」は米の豊作を願うことで、花とは稲の花のことだと伝わっている。もともとここには松尾水神社というお宮があって、多くの人は「花まつり神社」と呼んでいたらしい。水源地に水の神様をまつり、豊穣を願った松尾水神社は、いまは大畑の山神社に合祀されている。
大畑の山神社の主祭神は大山祇尊(おおやまづみのみこと)であり、山が多い日本の各地にこの山の神が祀られている。ここ大畑では山の神を大切にし、集落の中心として祀ったものと思われる。合祀されている祭神は天照大神、都能波女神、素戔嗚尊である。天照大神はいわずと知れた太陽の神であり、都能波女神(弥都波能売命)は罔象女(みずはのめ)ともいい、水をつかさどる神である。素戔嗚尊(須佐之男命)は荒神で知られた天上界の暴君であるが英雄の一面ももっており、この柱は室山荒神社を合祀したことによっている。
また、三ツ尾や三原にも荒神社があり、その祭神も素戔嗚尊である。これら『古事記』や『日本書紀』に記された神々を祀るお宮は、古来より南広地域を開拓した人々の心のよりどころであったにちがいない。
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